背景
お客様から届く、
使われなくなった時計
時計修理業を生業としていますので、これまで多くのお客様の時計を直してきました。また、当店には創業当時からお客様から頂いた、壊れてしまい不要になった時計がたくさん溜まっています(錆びてボロボロになった時計、車に轢かれて粉々になった時計など)。不要になった時計の一部は他の時計修理の部品取りとして活用するために大切に保管していますが、劣化したり破損していたり、完全に壊れた時計はもうどうしようもなく、捨てる他に道がありません。
時計にはいろんな
「もったいない」という思いがある
時計は身につける道具であり、大事に使っていれば数十年と使えるものでもあります。だからこそ人生の節目で買った時計を永く愛用したり、形見として故人の時計を身に付けたり、親から子へ、子から孫へと時計を引き継がせたりする光景をこれまで多く目にしてきました。時計は使う人の想いが乗る道具です。様々な事情があると思いますが、そんな時計を不用品としてお客様から回収すると、どうしても「もったいないな」という気持ちを抱いておりました。また、この「もったいないな」という気持ちはもう1つあります。
時計の機能美を
終わらせたくないという、
職人としての思い
それは時計の美しさ、という点にあります。時計の内部構造の世界観はとても美しいと感じていました。なぜこのパーツ(歯車など)がこの位置に収まっているのか。ここに装飾が入る余地はなく、すべてが時計を動かすという目的のもとに集まっている機能美そのものなのです。通常、時計の内部構造を見る機会はないため、何らかの方法を使ってぜひこの機能美を世間に披露したいと思いました。それがアートへと昇華したら、面白い世界観が作れるのではないかと閃き、スクラップから立体作品を作り始めたのがチクタクアートです。
再び時を刻めるように、
命を吹き込む
これまで人目につかない場所で時を刻むために懸命に動いていた歯車やゼンマイなどの時計を構成するパーツの美しさを、ぜひ多くの人に見ていただきたいと思っています。チクタクアートは、時計の廃材が新たな生命へと生まれ変わり、失われた時が再び動き出すという思いを込めて作っています。廃材となった時計のパーツが生物へと姿を変え、それぞれの作品が伝える「時の流れ」を感じ取っていただければ幸いです。時計のパーツが持つ独自の美しさと、その歴史や背景に込められたストーリーを通じて、新たな視点で時の移ろいを感じてください。